現在開設しているクリニックを廃業することなく存続させたい場合、個人診療所か医療法人かによって、次の承継の形態が考えられます。
個人診療所の場合、他の財産と同様にすべての事業用財産が課税の対象となります。
生前贈与対策をしていなかったり、遺言がなければ、本来、後継者が相続すべき診療所の土地、建物等の事業用資産までもが後継者以外の他の相続人に分割され、事業を承継できないケースも考えられます。
開業医としての社会的使命を考え、診療所が永続的に発展できるよう生前にきちんとした事業承継対策を考えておくことが必要です。
診療所の土地、建物の取り扱い | 親名義の土地、建物は、承継者である子に貸し付けるか、譲渡、贈与により子の名義に変えることもできます。
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医療機器等の取り扱い | 医療機器を引き続き子に使用させる場合には、土地・建物と同様に、譲渡・賃貸・贈与の3つの方法があります。賃貸の場合には、親と生計が一であるか否かによって、賃貸料の支払いがあっても、その取扱いが異なります。 |
たな卸資産や未収金 | 親の開設していた診療所のたな卸資産や未収金は、親の所有財産や債権ですから、売却や贈与によって、子に承継することができます。 |
借入金の引き継ぎ | 債権者の同意を得れば引き継ぐことが可能です。この場合、借入金の利息は事業所得の必要経費に算入することができます。 |
院長への退職金 | 勇退する院長に退職金は支給できませんが、承継後(院長交代後も)診療を続ける場合には、一定の要件のもと、子である院長から給与を受け取ることができます。 |
手続き |
※旧診療所の廃止手続きも必要です。 |
第三者への譲渡 | 売却価格によって譲渡損益が生じます。 |
M&Aの形態には、(1)個人から個人、(2)個人から法人、(3)法人から個人、(4)法人から法人、などがあります。
また、基本的に、既存のクリニックは廃止し、新規のクリニックを開設することになります。
M&Aは、合併と異なり、総社員の同意、知事の認可、債権者保護といった複雑な手続きを経ずに医療法人を取得できるというメリットがあり、近年、買い手側のニーズが増えています。
また、売り手側も、後継者がいない場合には、投下資本の回収ができるうえ、これまで築いてきた地域医療と患者さんを引き継いでもらえるというメリットがあります。
売り手側 | 買い手側 |
1.クリニックの売却意思のの決定 | 1.クリニックの買収意思のの決定 |
2.アドバイザーの選定 | 2.売り案件探し |
3.アドバイザーと契約 | 3.アドバイザーの選定 |
4.アドバイザーに資料提出 | 4.本交渉前の事前交渉 |
5.アドバイザーが買い手探し | 5.譲渡の覚書の締結 |
6.本交渉前の事前交渉 | 6.買収査定及び価格の決定 |
7.譲渡の覚書の締結 | 7.譲渡の本契約の締結 |
8.譲渡の本契約の締結 | 8.出資持分の譲渡、対価の受け渡し |
9.出資持分の譲渡、対価の受け渡し | 9.医療法人の役員の変更手続き |
(留意点)
| (留意点)
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上記に加えて、地域住民にとっても、これまで現経営者がその地域で行ってきた医療が継続されるというのは、何にも代えがたい安心感につながるものと思われます。
しかし、その一方で、後継者・現経営者のそれぞれにとって、望んでいたような条件が実現できない可能性も否定できません。
承継の方法や条件をめぐって、両者間で合意が得られないケースも多く、また医療という非営利事業、許認可など制度面の特殊性もありますので、承継を検討する際には、客観的かつ専門的な第三者に仲介を依頼することが賢明と思われます。
平成26年度税制改正において、新たに医療法人の持分にかかる相続税・贈与税の納税猶予等の特例措置が創設されました。これは、持分あり医療法人の出資者の死亡によって相続が発生する等により医業の継続に支障をきたすことのないよう、期限(最長3年間)を定めて持分なし医療法人への移行を進める医療法人について、移行期間中の相続税・贈与税にかかる納税を猶予し、また、移行後に猶予税額を免除するものです。
個人(相続人)が持分の定めのある医療法人の持分を相続または遺贈により取得した場合、その医療法人が相続税の申告期限において認定医療法人であるときは、担保の提供を条件に、移行計画の期間満了までその納税を猶予し、移行期間内に当該相続人が持分のすべてを放棄した場合には、猶予税額を免除する。
認定医療法人の出資者が持分の放棄をしたことにより他の出資者に贈与税が課される場合には、担保の提供を条件に、移行計画の満了までその納税を猶予し、移行期間内に当該他の出資者が持分のすべてを放棄した場合には、猶予税額を免除する。
提供:株式会社TKC
東京税理士会所属
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